『カラオケ行こ!』(和山やま)は、合唱部の男子中学生・岡聡実と、ヤクザの男・成田狂児の奇妙な交流を描いた短編漫画。狂児は組のカラオケ大会で勝つため、歌が上手い聡実にレッスンを依頼する。脅しのようでいて礼儀正しく、歌に真剣な狂児と、戸惑いながらも誠実に応じる聡実のやりとりが、笑いと温かさを生む。
暴力や恐怖を排し、音楽を通じて築かれる信頼と友情が、静かに心を打つ。和山やま特有の間とユーモアが光る、異色の“青春”物語。【ebookjapan】カラオケ行こ! ![]()
『カラオケ行こ!』(和山やま)の詳細レビュー
『カラオケ行こ!』は、合唱部の中学生・岡聡実とヤクザ・成田狂児の奇妙な交流を描いた一巻完結の漫画。歌が下手な狂児が、組のカラオケ大会で罰を受けないため、聡実に歌唱指導を依頼するという突飛な設定ながら、物語は静かで温かく、ユーモアと人間味に満ちている。和山やま特有の間合いとセリフ回しが冴え、登場人物の表情や空気感が絶妙に描かれる。年齢も立場も違う二人が、音楽を通じて築く信頼と友情は、読者の心にじんわりと染み入る。ギャグと感動が共存する、唯一無二の“癒し系”青春譚。
あらすじ:「カラオケ行こ!」
森丘中学校合唱部の部長・岡聡実は、声変わりに悩む中学3年生。ある日、ヤクザの成田狂児に突然カラオケに連れ出される。狂児は、組のカラオケ大会で最下位になると罰として珍妙な刺青を彫られるため、どうしても歌がうまくなりたいという。
聡実は戸惑いながらも、狂児の真剣な姿勢に心を動かされ、歌唱指導を引き受ける。週に一度のレッスンを通じて、二人の間には年齢や立場を超えた奇妙な友情が芽生えていく。聡実は自分の声と向き合い、狂児は歌を通じて人との関わり方を学ぶ。
やがて訪れる合唱祭とカラオケ大会、それぞれの舞台で二人は何を得るのか。笑いと感動が交錯する、静かな青春と再生の物語。
作者紹介
和山やまは、1991年生まれの漫画家。独特の間合いとシュールなギャグ、そして人間味あふれるキャラクター描写で注目を集める。代表作に『夢中さ、きみに。』『女の園の星』『ファミレス行こ。』などがあり、いずれも日常の中に潜む違和感やユーモアを巧みに描く作風が特徴。
『カラオケ行こ!』は、同人誌として発表された後、加筆修正を経て商業出版され、話題作となった。人物の表情や空気感を繊細に描く画力と、セリフの妙が光る。読者からは「和山ワールド」と称されるほど、唯一無二の世界観を持つ作家である。
登場人物一覧
・岡聡実:森丘中学校合唱部部長。冷静で毒舌な中学3年生。
・成田狂児:四代目祭林組若頭補佐。歌が苦手な39歳のヤクザ。
・組長:絶対音感を持つカラオケ好き。罰として刺青を彫る。
・聡実の母:息子の合唱祭を応援する優しい母。
・聡実の兄:大学生。聡実にお守りを渡す。
・聡実の父:安産のお守りを渡す天然系。
・合唱部後輩:聡実の代役を務める真面目な2年生。
作品詳細
・シリーズ名:カラオケ行こ!
・作者:和山やま
・出版社:KADOKAWA
・掲載誌:月刊コミックビーム(単行本は描き下ろし含む)
・ジャンル:青春、ギャグ、ヒューマンドラマ
・巻数:全1巻
・発売日:2020年9月12日
・ISBN:978-4-04-736151-5
・関連作品:『ファミレス行こ。』(続編)
『カラオケ行こ!』読みどころ
『カラオケ行こ!』の最大の魅力は、異色の組み合わせである中学生とヤクザの関係性が、奇をてらうことなく自然に描かれている点だ。成田狂児の「歌がうまくなりたい」という純粋な願いと、岡聡実の「声が出なくなった」という悩みが交差することで、物語はただのギャグにとどまらず、深い人間ドラマへと昇華する。
和山やまの描く空気感は、静かでありながら濃密。セリフの間や表情の変化が、登場人物の心情を繊細に伝える。特に、狂児が歌う「紅」に込める思いと、聡実が自分の声と向き合う過程は、読者の心を揺さぶる。また、脇役たちの存在も温かく、家族や仲間との関係性が物語に厚みを加える。
笑えるのに泣ける、軽やかでいて重みのある一冊。音楽を通じて人と人がつながる奇跡を、静かに、でも確かに描いている。
感想レビュー(カラオケ行こ!)
読後、心がじんわりと温かくなる作品だった。ヤクザと中学生という突飛な設定に最初は驚くが、読み進めるうちに二人の関係性に引き込まれていく。狂児の不器用な優しさと、聡実の冷静なツッコミが絶妙なバランスで、笑いながらも胸が締め付けられる場面も多い。
特に、聡実が声の悩みを打ち明けるシーンや、狂児が「紅」を歌う場面は、感情が溢れてくる。和山やまの描く人物は、どこか現実にいそうで、でも少しだけ非現実的。その絶妙な距離感が、読者に安心感と共感を与える。
一巻完結ながら、物語の余韻は長く残る。ギャグ漫画としても、ヒューマンドラマとしても秀逸で、何度でも読み返したくなる作品。日常に疲れたとき、そっと寄り添ってくれるような優しさがある。
総評まとめ:「カラオケ行こ!」
『カラオケ行こ!』は、和山やまの作家性が凝縮された珠玉の一冊。ギャグと感動、静けさと熱さが絶妙に混ざり合い、読者の心に深く残る作品となっている。登場人物の描写は細やかで、特に表情や間の取り方が秀逸。
狂児と聡実という異なる世界に生きる二人が、音楽を通じて心を通わせる過程は、笑いながらも涙を誘う。一見奇抜な設定ながら、物語は地に足がついており、読者に安心感を与える。
また、脇役たちの温かさや、家庭の描写も丁寧で、物語に厚みを加えている。一巻完結でありながら、続編『ファミレス行こ。』へとつながる余韻もあり、シリーズとしての広がりも感じられる。
日常の中にある小さな奇跡を描いた、優しくて力強い作品。漫画好きはもちろん、普段漫画を読まない人にもぜひ手に取ってほしい。
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