『ルックバック』は藤本タツキによる読み切り漫画で、絵を描くことが好きな少女・藤野と、引きこもりの天才・京本の交流を描いた物語です。藤野は学校新聞に4コマ漫画を連載していたが、京本の圧倒的な画力に衝撃を受け、努力を重ねて成長します。やがて二人は漫画を共同制作するようになり、夢を追う日々を過ごしますが、ある事件をきっかけに運命が大きく揺らぎます。
創作への情熱、才能の差、孤独、そして「もしも」の選択が繊細に描かれ、読者の心に深く残る作品です。藤本タツキらしい暴力と優しさの混在が、静かな余韻を生み出します。【ebookjapan】ルックバック ![]()
『ルックバック』(藤本タツキ)の詳細レビュー
『ルックバック』は、藤本タツキが2021年に「少年ジャンプ+」で発表した読み切り漫画。絵を描く少女・藤野と、不登校の天才・京本の出会いと別れを描いた物語です。創作への情熱、才能の差、友情、そして喪失が、わずか143ページに凝縮されており、読者の心を深く揺さぶります。セリフの少ない場面で語られる感情の流れ、背中で語るキャラクターの心理描写は圧巻。現実の事件を想起させる展開も含み、フィクションとノンフィクションの境界を揺さぶる構成が秀逸です。読後に残る余韻と問いかけが、作品の深さを物語っています。【ebookjapan】ルックバック ![]()
あらすじ:「ルックバック」
藤野は学級新聞に4コマ漫画を連載する小学生。自分の絵に自信を持っていたが、ある日、不登校の同級生・京本の作品が掲載され、その圧倒的な画力に打ちのめされる。悔しさから絵の練習に没頭するも、京本には及ばず、漫画を諦める。卒業式の日、藤野は京本に卒業証書を届けに行き、初めて彼女と対面。
京本は藤野のファンだったと告げ、二人は漫画を共同制作するようになる。やがてプロとして活躍するが、京本は美大へ進学し、道を分かつ。ある日、美大で起きた事件により京本が命を落とし、藤野は自責の念に苦しむ。もし違う選択をしていたら…という“もう一つの世界”を想像しながら、藤野は再び漫画を描き始める。
作者紹介
藤本タツキは秋田県出身の漫画家。代表作に『ファイアパンチ』『チェンソーマン』があり、独特の構成力と感情表現で高い評価を受けています。『ルックバック』は、彼の読み切り作品の中でも特に話題を呼び、2021年に「少年ジャンプ+」で公開されるや否や、SNSで爆発的に拡散。
藤本作品の特徴は、暴力と優しさ、現実と幻想、そして人間の業を描く深いテーマ性にあります。『ルックバック』では、セリフを極力排し、絵と構成で語る力を最大限に発揮。2024年には劇場アニメ化もされ、国内外で高い評価を得ています。彼の作品は、読む者に強烈な印象と問いを残す、まさに“体験”としての漫画です。
登場人物
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藤野:学級新聞に漫画を連載する少女。努力家で情熱的。
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京本:不登校の天才少女。静かながら圧倒的な画力を持つ。
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教師:藤野に京本の卒業証書を届けるよう依頼する人物。
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藤野の母:藤野に京本の訃報を伝える。
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犯人:美大に侵入し、京本を含む学生を襲撃した人物。
作品詳細
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シリーズ名:ルックバック
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作者:藤本タツキ
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出版社:集英社
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掲載誌:少年ジャンプ+
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ジャンル:ドラマ、青春、心理、創作、フィクション
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巻数:全1巻(読み切り)
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発表年:2021年7月19日
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ページ数:143ページ
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映画化:2024年6月28日劇場公開
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受賞歴:『このマンガがすごい!2022』オトコ編1位、楽天Kobo電子書籍Award 2023 読み切り部門1位
『ルックバック』読みどころ
『ルックバック』の最大の魅力は、創作に向き合う二人の少女の関係性と、絵で語る表現力です。藤野の嫉妬と努力、京本の静かな情熱が交差し、やがて「藤野キョウ」という一人の漫画家として融合していく過程は、創作の本質を突いています。
セリフのない場面で描かれる季節の移ろいや背中の表情は、言葉以上に雄弁で、読者の感情を揺さぶります。また、後半に描かれる事件は、現実の悲劇を想起させる重みを持ち、フィクションでしか描けない“もしも”の世界線が提示されます。
藤野が妄想する「京本が生きていた世界」は、読者にとっても救いであり、創作の力を信じる希望でもあります。絵を描くことの意味、誰かに届くことの喜び、そして喪失と再生。すべてが凝縮された一冊です。
感想レビュー(ルックバック)
読み終えた瞬間、言葉を失いました。『ルックバック』は、ただの漫画ではなく、魂に触れる“体験”です。藤野の嫉妬、努力、挫折、そして再生の物語は、創作に関わるすべての人に刺さるでしょう。
京本の「藤野のファンです」という一言が、どれほどの力を持つか。誰かに届くことの喜びが、創作の原動力になることを教えてくれます。事件の描写は重く、現実の悲劇を思い起こさせるものですが、それでも藤野が再び漫画を描く姿に、希望を見出すことができます。
セリフの少ない構成、絵で語る力、そして余白の多い読後感。すべてが藤本タツキの真骨頂。1冊でここまでの感情を揺さぶる作品は稀有です。読む前と読んだ後で、世界の見え方が変わるかもしれません。
総評まとめ:「ルックバック」
『ルックバック』は、創作と人生の本質に迫る傑作です。藤本タツキの圧倒的な構成力と感情描写が、143ページという短さの中に凝縮され、読者に深い問いを投げかけます。藤野と京本の関係は、才能と努力、嫉妬と尊敬、孤独と絆が交錯する複雑なもの。
その関係性が、創作の喜びと痛みを象徴しています。事件の描写は重く、読む人によっては辛さを伴いますが、それも含めて「現実と向き合う力」を持った作品です。もし違う選択をしていたら?という問いは、創作だけでなく人生そのものに通じます。
読後に残る余韻と、再び前を向く藤野の姿が、希望と再生を感じさせてくれる。1冊完結の漫画として、間違いなく歴史に残る作品です。創作に関わるすべての人に読んでほしい一冊です。
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