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『いつか死ぬなら絵を売ってから』あらすじ、レビュー 漫画/静かな熱を帯びたヒューマンドラマ。

【ebookjapan】いつか死ぬなら絵を売ってから

 

いつか死ぬなら絵を売ってから』(ぱらり)は、ネカフェ暮らしの清掃員・霧生一希が主人公。絵を描くことだけが心の支えだった彼の前に、資産家の青年・嵐山透が現れ、「絵を買いたい」と申し出る。透は一希の才能に惚れ込み、パトロンになると宣言。こうして正反対の二人がタッグを組み、アートと金の世界に飛び込む。

絵の価値とは何か、人生を変えるとはどういうことか。美術界の裏側と人間の欲望が交錯する、静かな熱を帯びたヒューマンドラマ

 

『いつか死ぬなら絵を売ってから』(ぱらり)の詳細レビュー

 
 

あらすじ:「いつか死ぬなら絵を売ってから」

 

ネカフェ暮らしの清掃員・霧生一希は、絵を描くことだけが心の支えだった。ある日、資産家の青年・嵐山透が彼の絵に価値を見出し、「買いたい」と申し出る。最初は冗談だと思った一希だが、透は本気で彼の才能を信じ、パトロンになると宣言。

こうして、絵の世界とは無縁だった一希が、アート市場の荒波に飛び込むことになる。絵の価値とは何か、人生を変えるとはどういうことか。芸術と金、孤独と希望が交錯するヒューマンドラマ。

 

作者紹介

 

ぱらり:繊細な心理描写と社会的テーマを得意とする漫画家。代表作に『ねこにんげん』『スーパーヒロインボーイ』など。日常の中に潜む違和感や、社会的マイノリティの視点を丁寧に描く作風で知られる。

『いつか死ぬなら絵を売ってから』では、アートと経済の交差点を舞台に、現代の孤独と希望を描き出す。

 

登場人物一覧

 

  • 霧生一希(きりゅう かずき)児童養護施設出身。ネカフェ暮らしの清掃員。絵を描くことが唯一の趣味。

  • 嵐山透(あらしやま とおる):資産家の青年。アートコレクター。一希の絵に価値を見出し、パトロンとなる。

  • 雲井美大の非常勤講師。透の紹介で一希が清掃の仕事を始めるアトリエの主。

  • 凪森:アート複合施設の関係者。物語の中盤以降で重要な役割を果たす。

  • 墨谷凛:透が語る伝説的な画家。物語の象徴的存在。

 

作品詳細

 

  • シリーズ名:『いつか死ぬなら絵を売ってから』

  • 読み:いつかしぬならえをうってから

  • 作者:ぱらり

  • 掲載誌:秋田書店『月刊ミステリーボニータ』2022年10月号より連載

  • 受賞歴:Google Play ベストオブ2023「ベストヒューマンドラママンガ」受賞、宝島社『このマンガがすごい!2024』オンナ編第18位

  • 巻数:現在5巻(続刊中)

  • ジャンル:ヒューマンドラマ/アート/社会派

 

『いつか死ぬなら絵を売ってから』読みどころ

 

『いつか死ぬなら絵を売ってから』は、絵を描くことしか知らなかった青年が、アート市場という「価値の海」に放り込まれる物語だ。読みどころは、まず一希の視点から描かれる「絵の価値とは何か」という問い。

彼は美術教育も受けておらず、絵を売ることに罪悪感すら抱く。そんな彼に透が語る「市場価値」「一次・二次市場」「保税倉庫」などのリアルなアートビジネスの仕組みは、読者にも新鮮な驚きを与える。

さらに、透の狂気すれすれの情熱と、一希の素朴な感性がぶつかり合うことで、物語は単なる成功譚ではなく、芸術と人間の本質に迫る哲学的な深みを持つ。

絵を描くことが「生きること」と直結する一希の姿は、創作に携わるすべての人に刺さるだろう。アートに興味がない人でも、人生の選択や人との関係性に悩む人には強く響く作品だ。

 

作品の感想と考察

 

この作品は、アートを「売る」ことへの葛藤を軸に、社会的弱者が自分の価値を見出していく過程を描いている。一希の絵は、彼の過去や孤独、そして希望の断片であり、それを「商品」として扱う透の姿は、冷酷にも見えるが、実は彼なりの救済でもある。

透の言動にはモラハラ的な側面もあり、読者の間でも賛否が分かれるが、それこそがこの作品のリアリティだ。人は誰かを救おうとする時、必ずしも優しくはなれない。

また、アート市場の描写は非常に具体的で、保税倉庫やオークションの仕組みなど、実際の美術業界に通じる知識が盛り込まれている。

これは単なるフィクションではなく、現代社会の縮図でもある。絵を描くことが「生きること」そのものである一希の姿は、創作に携わる人々の心に深く刺さるだろう。

【DMM】いつか死ぬなら絵を売ってから 1

 

総評(まとめ):「いつか死ぬなら絵を売ってから」

 

いつか死ぬなら絵を売ってから』は、アートと経済、孤独と希望、支配と共存といったテーマを繊細かつ力強く描いた作品である。ぱらりの筆致は、感情の揺れを丁寧にすくい取り、読者に「生きるとは何か」「価値とは何か」を問いかける。

一希と透の関係は、単なる師弟でも恋愛でもなく、もっと複雑で、もっと人間的だ。絵を描くことが救いであり、呪いでもあるという一希の姿は、創作に関わるすべての人にとって鏡のような存在だろう。また、アート市場のリアルな描写は、物語に深みを与え、単なる感動作では終わらせない。

今後の展開次第では、現代漫画の金字塔となる可能性すら秘めている。絵を描く人、絵を売る人、絵を買う人、そして絵に救われた人——すべての人に読んでほしい一作である。

 

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