『球詠』はマウンテンプクイチによる女子高校野球漫画。中学時代に「魔球」を投げられなかった武田詠深が、高校で幼なじみの捕手・山崎珠姫と再会し、再び野球に挑む。女子野球がメジャーな世界で、戦術や心理描写も本格的。
『ぷくゆり』『ななゆり』『あまゆる。』など、マウンテンプクイチ作品は思春期少女の友情や日常を繊細に描く短編集が多く、百合要素と温かな空気感が魅力。
『球詠(たまよみ)』(マウンテンプクイチ)の詳細レビュー
『球詠』は女子高校野球を題材にしたマウンテンプクイチの漫画作品。中学時代に「魔球」を受け止めてもらえず挫折した投手・武田詠深が、高校で幼なじみの捕手・山崎珠姫と再会し、再び野球に挑む姿を描く。女子野球が一般化した世界観の中で、技術的な描写と心理戦が丁寧に描かれ、試合の緊張感と青春のきらめきが融合している。百合的な関係性も自然に織り込まれ、友情と絆が物語の核となる。野球への真摯な姿勢と、仲間との成長が胸を打つ作品。球詠(ebookjapan) ![]()
あらすじ:「球詠(たまよみ)」
武田詠深は中学時代、誰にも受け止めてもらえない「魔球」を持つ孤高の投手だった。野球を諦めかけていた彼女は、高校入学後、幼なじみの捕手・山崎珠姫と再会する。珠姫は詠深の球を受け止められる唯一の存在。
二人は野球部の再建に乗り出し、個性豊かな仲間たちと共にチームを作り上げていく。女子野球が一般化した世界で、彼女たちは技術と絆を武器に、強豪校との試合に挑む。勝利だけでなく、野球を通じて自分自身と向き合い、仲間との信頼を深めていく姿が描かれる。
作者紹介
マウンテンプクイチは、繊細な心理描写と百合的な関係性を得意とする漫画家。代表作には『あまゆる。』『ぷくゆり』『ななゆり』などがあり、いずれも日常の中にある小さな感情の揺れや、少女たちの関係性を丁寧に描いている。
『球詠』では、スポーツという動的な題材を扱いながらも、彼女らしい静かな情感と絆の描写が光る。キャラクターの表情や間の取り方に独特の味があり、読者に余韻を残す作風が魅力。百合と青春、そして技術的な野球描写を融合させた作風は、他に類を見ない。
登場人物
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武田詠深:主人公。魔球を持つ投手。内向的だが芯が強い。
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山崎珠姫:詠深の幼なじみで捕手。明るくチームのまとめ役。
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川口息吹:俊足の外野手。ムードメーカー。
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中村希:冷静な分析力を持つ内野手。
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藤田菫:パワー型の打者。豪快な性格。
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岩城良美:副キャプテン的存在。精神的支柱。
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逢坂ここ:新入部員。野球初心者ながら情熱的。
『球詠』読みどころ
『球詠』の最大の魅力は、女子野球という題材を本格的に描きながら、キャラクター同士の絆や成長を丁寧に描いている点にある。詠深と珠姫の再会から始まる物語は、単なるスポーツ漫画ではなく、過去の挫折と向き合いながら再び夢に挑む姿が感動を呼ぶ。
試合描写は戦術的で、守備の配置や配球の意図など、野球経験者も唸るほどのリアリティがある。一方で、仲間との会話や日常の描写には百合的な柔らかさがあり、読者の心を癒す。特に珠姫が詠深の球を受け止めるシーンは、技術と信頼の象徴であり、何度読んでも胸が熱くなる。
また、強豪校との試合では、相手チームのキャラクターも魅力的に描かれ、単なる勝敗以上のドラマが展開される。友情、努力、絆、そして野球への愛が詰まった一作。
感想レビュー(球詠)
『球詠』を読んでまず感じるのは、野球に対する真摯な姿勢と、キャラクターたちの成長の軌跡だ。詠深の「魔球」は単なる必殺技ではなく、彼女の孤独と希望の象徴であり、それを受け止める珠姫との関係性が物語の核となっている。
試合の緊張感はもちろん、日常の描写にも温かさがあり、読者は彼女たちの一挙手一投足に心を寄せることになる。特に、試合後の控え室や帰り道の会話など、何気ない場面にこそ絆が滲む。
百合的なニュアンスも自然で、押しつけがましくなく、読者の想像に委ねる余白が心地よい。また、野球の技術的な描写がしっかりしているため、スポーツ漫画としての満足度も高い。青春の一瞬を切り取ったような、眩しくて切ない作品。
作品詳細
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シリーズ名:球詠
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作者:マウンテンプクイチ
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出版社:芳文社
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掲載誌:まんがタイムきららフォワード
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ジャンル:女子野球、青春、百合、スポーツ
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巻数:既刊14巻(2025年10月時点)
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アニメ化:2020年春にTVアニメ化
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対象読者:中高生~大人の百合・スポーツファン
総評まとめ:「球詠(たまよみ)」
『球詠』は、女子野球というニッチな題材を真正面から描いた意欲作であり、スポーツ漫画としての完成度と、キャラクター同士の関係性の深さが両立している稀有な作品だ。
マウンテンプクイチの作風が生きた繊細な心理描写と、野球の戦術的な面白さが融合し、読者を引き込む。詠深と珠姫の関係性は、単なる友情を超えた信頼と絆を感じさせ、百合的な魅力も十分。試合の緊張感と日常の柔らかさが交錯する構成は、読後に深い余韻を残す。
また、脇役たちも個性豊かで、チームとしての成長が丁寧に描かれている点も高評価。野球を知らない読者にも優しく、知っている読者には深く刺さる。青春と挑戦、絆と再生を描いた、心に残るスポーツ漫画の傑作。
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